社会人8年目になろうという今日この頃、勤務先6か所目のまっかちんです。
2月になりまして、現在の職場に勤めて3か月目となったのですが、1月の初めにこんな辞令を受けました。
「ウェブマーケの部署からテレマーケティング部へ異動して、これから毎日電話で顧客フォローをしてください」
「顧客に電話のつながりやすい時間に従事していただきたいので、毎日19時まで残業してください」(就業時間は9:00〜18:00、休憩1時間)
「3か月たったら試用期間が終わりですし、現在の30何万円という月給はこの部署でのあなたの能力には見合わないと思うので、3月から月給を変えたいと思います。大体20何万という額面になると思います」
ウェブ編集の経験を積みたくて、そして年収を上げたくて入社したので、えっ…!となりました。
会社ってそうやって職務内容・給与といった条件を変える権利があるのか…と納得しかけたのですが、実際のところどうなんだろうと思い、大学の先輩で法律事務所を開かれている弁護士の矢作(やさく)先生に雇用契約書を携えてお話しをうかがってきました。
◆弁護士矢作和彦先生のプロフィール
※以下、もし内容におかしなところがあればわたしの聞き取りミスなので当方(まっかちん)までご指摘ください。
※2018/2/8 21:40修正を加えました。
■雇用契約書に「その他会社運営に必要な職務」があるから今回の配置転換は有効
まず、労働条件を確認する際は以下の3点を参照するそうです。
- 労働条件通知書
- 雇用契約書
- 就業規則
労働条件通知書と雇用契約書はどちらか一方の場合もあり、また労働条件通知書や雇用契約書と就業規則とに齟齬のある場合は有利な条件については、労働条件通知書の内容が優先されるとのこと。
ちなみに就業規則は日本独自のシステムらしいです。雇用契約の一部とみなされるものだそう。
就業規則は従業員10名以上の場合に作成を義務付けられるものですが、従業員がいつでも見られる場所に置かれていて(印刷された物がなくても、イントラネット等で見られればOK)かつ従業員がその場所を知っている(周知されている)状態にしないとだめとおっしゃっていました(=「有効にならない」という意味です)。
わたしが入社前に受け取った前者2つ、両方に職務については「社内記事の執筆、その他会社運営に必要な業務」と記載されています。
なので原則として今回の異動には文句が言えません。ただし、嫌がらせ目的であるなど人事権の濫用であると言える場合には配置転換は無効になります。
もしわたしが今後同じ事態を防ぎたいなら、「その他」という要素を労働条件通知書や雇用契約書に含めないよう注意するべきだそうです。
また、残業についても原則として36協定が締結されていればその範囲で従う必要があります。
残業については、時々保育園のお迎えがあると事前に伝えてたのになとも思ったのですが、子育てがあるから何かを免除されるというのには抵抗があり…その点は今回あえて確認していません。子育ては母親だけのものではない。遅くまで帰れない社会っていうのもなんか違う気がするけれど。
■労働者は弱いけど、給料は簡単に変えられない
給料もらっているから当然といえば当然ですが、職務内容、勤務時間について会社側に決定権があるというのはこういうことだったのか、とちょっと愕然としました。
(※矢作弁護士注:ここも、人事権の濫用にあたる場合には変更が無効になります。)
こんな短期間で思っていたのと違う業務をこなさねばならなくなるなんて。労働者って会社の言いなりなのね(せめて大企業で福利厚生やらなんやらがあればなあ)と思ったのですが、なんとびっくり給与については簡単に減額が認められないことになっているそうです。
わたしの雇用条件通知書には
基本賃金 年俸●●●万円、※ひと月あたりXX時間分のみなし残業代を含む
と記載されています。雇用契約書にはそれを12で除した月額も記載されています。
で、これを改定するには労働者(つまりわたし)の「真摯な同意」が必要になるそうです。
この真摯な同意を得たと法的に認めてもらうのは結構ハードルが高いとおっしゃっていました。
たとえば会社側が「いいよね?この金額に下げていいよね?」と対面で質問して、うなずいたとしてもそれは「真摯な同意」にはならないらしいです。
労働者がおうちでじっくり考えて、わかりましたこの減額に応じますと、自主的に紙面で渡してきた…という事実があれば有効だとかなんだとか。というのも給与というのは労働者にとってあまりに重要なものだから、という説明だったのですが一回では理解できませんでした(汗)
いずれにせよ、職務や勤務時間と違い、給与は「減額します」と一方的に会社が宣言して変えられるものではないそうです。
ちなみに「試用期間」だからその後給与を変更することについては
法的には、試用期間は解約権留保付き雇用契約と考えられており、客観的に合理的な理由がある場合に限り、本採用しないことができるに過ぎません。給与額は初めに提示したもので雇用契約が成立しています。ということになるそうです。
■まとめ
▲矢作さんの著書
それで、じゃあもし会社から「お給料変える」って言われてしまったら何ができるのよ、ってなると、「職務内容と勤務時間はそりゃ従うけど、減額は同意しません!と会社に返答すること」だと思います。
それでも勝手に減額された場合、法に訴えれば差額の支払い命令が下る可能性はおおいにあるということでした。
でも…「減額は同意しない!」と言ったら会社と関係が悪くなるのは必至だし、法に訴えてことを運んだら言わずもがな。
(※矢作弁護士注:雰囲気が悪くなる可能性はあるけど、最近は話せば理解してくれる会社も多々ありますよ。ただ、小規模の会社ではやっぱり厳しいかな…。)
会社に最初の契約の給与を支払ってもらうために行動に移す人もいるそうです。でも、腑に落ちない気持ちを抱えながら次の仕事を探すしかないのかな、というのがわたしの気持ちでした。
今回の件は、雇用条件書に書いてあることを現実に落とし込むとどうなるのか体当たりで学ぶ機会になりました。
会社に社員として所属することのメリット(社会保険など)があるわけだし、組織に所属しないとできない経験をするチャンスも得るわけなので、その代わりに何を差し出すかというのが会社員でいること(雇用契約を結ぶこと)の意味なのだと改めて認識しました。
あくまで「今回のわたしのケースでは」という但し書き付ですが、労働条件通知書や雇用条件書の見方の、また似たような状況に直面した方が会社からの指示をどう解釈するかの参考になったらいいなと思っています。
トップ画像は矢作さんが下さったビール。いただきものだけどビール好きじゃないんだそうです。わたしビール好きなので調子に乗って10本ももらっちゃいました。
そんな矢作先生いわく、
「労働事件は、証拠を確保してさえいれば『労働者側が強い』という印象がある分野なので、会社側に立つと常に『争われたら負ける』という前提で対応を考えています。」
だそうです。
う~ん、すごく大事な情報を聞いたような気もするけれど…純労働者としては、その証拠の確保が難しかったりしないのかしら争うのがそもそもハードル高くないのかしらとか思ってしまいます。
続編リクエストがあればまたインタビューお願いしてみようと思いますのでご感想ありましたらぜひ(そんな暇ないよっって言われてしまうかもしれませんが!)
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