奇をてらったタイトルだなあと敬遠していた「君の膵臓をたべたい」。ベストセラーを追っかける(しかし決して感動したとか心を持ってかれたというような感想は口にしない)、父親が図書館から借りていたので、帰省で子供の面倒をわたしの母親に任せられるのをいいことに、スタバで勢い読み切ってしまった。

改行と会話が多くて、ケータイ小説(まともに読んだことはないけど、わたしにとっては小説より魅力を感じないもの)を想起させるものの、高校生の男女がお互いを欠かせない存在と認識するのに、こじゃれた表現の言葉を交わし合って、共に食事や行動をするのが、とてもリアリティがあると感じられたし、憧れの気持ちを持ってシーンシーンに感情移入して読み進んでしまった。

「ラストでこのタイトルの意味がわかって泣ける!」というような煽りをどこかで見かけたので、なんだろうこのカニバリズムがどう感動を呼び起こすのだ、と不思議に思っていたが、結果、やはりその部分はきれいにまとまってるなぁという思いに止まってしまった。

それよりも、桜の花がなぜ春に咲くのか知っている?というくだりが、この春、逃したくないタイミングをつかめなかったわたしをはげましてくれているように感じられて、泣いてもいいのかなとすら感じた。

逃してしまったチャンスをまたつかめたら、きっとまた思い出す、そんな一冊でした。