
電通の女性が労働環境を苦に自死してしまったニュースが流れたことで、会社から逃げてもいいんだということが、似た状況のひとたちに気づかれるようになったのは、せめてもの救いだとおもう。
わたしは新卒で入った会社を9ヶ月ぽっちでやめてしまった経歴の持ち主である。
彼女をきっかけに自分の話をするのは失礼かもとちゅうちょするくらいの閑職だったけれども、「せっかく入った会社をやめちゃいけない」という気持ちはすごくわかる。
だからわたしが彼女のような状況のひとに伝えられるのは、その異常な状況から逃げるためのハウツーではないんだけども、少なくとも逃げた先がおわりっぽくてもなんとか生きられる、ってことは伝えてもいいかなと思っている。
いま新卒で勤めている人が吸っている空気は、実感はできないけれど。わたしが6年前新卒で勤務を始めた頃には、新卒入社した会社を1年足らずで辞めるのは人生の落伍者になりかけるよーなもん、という空気があったとおもう。(もっと何かしら条件の良いところに移るという場合はもちろん別で。)
ただわたしは良くも悪くも、人が選ばない道を選ぶことにどちらかというと慣れていたので、このままじゃ自分がダメになると思って、やめてしまった。
その会社は業界では大手だったし労務管理もきちんとしていたけれども、大卒の女性(つまりわたしのような)を採用するのはわたしで二人目で、わたしは入社日前日の招集で、自分に制服があてがわれていることを知った。女子だという理由で。
翌日、入社式、今より締まりのないウエストで履いたスカートはきつくて、というのが理由ではないが、部長に、男性社員と同じくスーツを着るので制服は免除してほしい、とかけあった。
あっさり、イエスと言われた。
出向して部長になる銀行員には面白くなく感じる社員も多いだろうけども、これがプロパーの部長だったら、首を縦に振ってくれたか定かではない。
わたしにとってはありがたい存在だった。
会社をやめた理由はいろいろあるけれども、最終的には自分の採用された意味がわからなかったことが大きい。採用したわたしをどこに配置するか計画がなかったのか、夏の終わりの1ヶ月間の工場研修を終えた頃には、わたしの仕事は外回りの社員が作った打ち合わせ報告書を案件ごとにファイリングする、しかなくなっていた。
自分の時間を有効に使いたくて、転職をすることにした。
人が選ばない道を選ぶことに慣れているつもりだったけれど、それでもこの先の経済的な自立の手段(要するに雇用される機会)を制限される予感に、会社を辞めるときは少し立ちすくむ思いがしたものだった。
新卒の会社で働き続けることを選ばなかったことを悔やんだことももちろんあったけど、それを選ばなかったことでしか手に入らなかったものもあった。今は前よりは肯定的に考えられる。ほとんど、6年もかかっているけど。
その後入社した会社も、2社続けて1年未満でやめてしまったのも、自分でも驚きなのだが、それはそれで修正できないんだから、自分の人生にとっていい意味になるように、今できることをやる。そんな気持ちで生きている。
そして、今のところ、なんとか生きている。
誰かの見本にはなれないけど、会社社会に振り落とされそうに感じながらもなんとかしがみついているサンプル、として、誰かの不安を減らせるといいなと思う。
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