イクメン。
この言葉は、この言葉自体が死語になることが社会の目標、として広まった背景があるらしいことを、
お恥ずかしながら本書で初めて知った。

わたしの夫はイクメンである。
週末は子どもと二人で公園に行くし、洗濯や縫い物、掃除はそつなくこなす。
平日の夜は、保育園のか迎えから息子のお風呂、寝かしつけまで、基本的に夫の担当である。
わたしは残業したり、友人と飲みに行ったり、またはまっすぐ帰って食事を準備する。

4歳の息子をきっかけに出会ったママ友さんには、いいねと言われることも少なくない。
彼女たちの夫は、仕事に忙しく、休みには自分の用もあり、彼女たちが期待する程度の家事育児はこなせないらしい。


そんな話を聞いていると、我が家の状況は特殊なのだと思い至る。
夫は一社員だが、定時退社できる状況にあることや、彼自身が結婚する50歳までは趣味と一人の時間を楽しんできたと感じているので、わたしの参加不参加にかかわらず、子どもと過ごしたいと言っている状況が。

本書を読んで、著者の提案している、男性の家庭と仕事の両立方法の心得を、無意識に自分自身が用いていたことに気がついた。

それは、家庭重視に切り替えた夫に対し、マッチョイズム(男なら仕事ができて一人前、お金をたくさん稼げば稼ぐほどえらい、エトセトラエトセトラ。)を強要しない、ということや、
子育て期には仕事に割ける時間的リソースが減るのだから、一時的に収入や勤務先での自分の評価が下がるのは仕方ない、と認めること。

定時退社や出張の調整などで、社内評価が下がる可能性について、夫の同意を得ているし、わたしも期待していないことは夫も了承済みである。

これはまさに本書で提案されている、両立の心得である。


ただし、八つの提言のうち残りについては、最近まで実行できていなかったものもある。
たとえば、夫婦喧嘩は結論を出さない、とか、完璧な状況を最初から実現させようとしない、とか。

著者によれば、夫婦喧嘩では、結論は出さなくても、相手の本音や問題意識を知ることで、無意識に、その問題を考えるようになり、そして歩み寄って、完璧ではなくとも、改善に近づくことができるという。

そして、その歩み寄りに関係することだが、相手に対する自分の要望を、相手がどの程度実現してくれるかについて、いきなり100点満点の答えを期待する必要はないと主張する。
家事分担のバランスだって、一定の割合に固定しなくていいと考えることの有効性を説く。

ゆるく期待すること、相手と自分の分担バランスを時によって変動させること。
このふたつが、現状を踏まえた夫婦関係の良さの実現につながるという意見は、自分自身が何度も夫婦喧嘩を経験してきたからこそ、納得のできるものであった。


著者は本書で、結婚し子どもを迎えた男性が、家庭重視と会社での評価という両立不可能なジレンマに立たされる現状について分析し、
そのジレンマを夫婦の双方が理解した上での、家庭内の不和を解消するための意識の持ち方を提案している。

わたし自身は、結婚とは、経済的にはもちろん、空間的、時間的な資源を他人と共有していく関係だと思っている。

共有する相手は他人であるからこそ、共有のための作法は必修科目。でもそれは、学校で学べるものではなく、こういった良書から学習できるもの。

共同生活をしているという方、特に家族のメンバーに子どもがいる(予定含む)に役立つ一冊と思う、ぜひ。