◼︎「ホテルで酒を飲むのに合意したなら、それはホテルで酒を飲むのに合意しただけ」
実物を読んでいなくて恐縮なんだけど、雑誌のプレジデントに、「二人で酒を買ってホテルの部屋で飲むことになったら、それは性的関係を気づくことに同意している」という表現があったらしく、それに対して弁護士の太田先生が「それはホテルの部屋で酒を飲むことに同意しただけで、性的関係に同意してないのは明らか」ということをハフィントンポストで説明していた(記事は、それ以外にもつっこみどころがある、という趣旨だった)。

まあ、それは、そうだよなあと思った。酒を飲むことにしか合意してないんだから、別のこと(セックス)に誘いたいなら、それは別で誘わないといけないんだろうなと。

たとえ表面上ノリノリに見えていたとしても、言葉にして確認すること、断ることが受け入れることと同じくらい選び取りやすい回答の選択肢になっていることは大事なはずだ、と。

◼︎自意識過剰系なまっかちんのある日の歪んだセックス観
とかいいつつ、わたし自身は、あなたとセックスしたいと思っていますと、言葉にするのが照れ臭くて、そんな確認はしょってくれる方がいいと思っていたこともあるのは事実。

そう考えていた頃のわたしは、自分とセックス「してくれる」人は貴重なんだという歪んだ自意識に囚われていた。

それが切り替わったのは、すごく礼儀正しい男の人と関係したことがあったから、かなと、記事を読んで思い出した。

◼︎まっとうな質問
その人とは、対面で、僕と(セックス)しませんか?と質問されたところから始まった。わたしはそれもいいなと思ったので、あ、はい、します、と答えてセックスしたのだけど、その時に付き合ってくださいとは言われてなかったので、その後関係を放置していた。

少ししてから、2度目はどうですかと聞かれたので、やはりそれもいいなと思い、日にちと時間を決めて二人で(そりゃ二人でなんだけど)ホテルに行った。

わたしは「その気」があってホテルに行ったのだけど、その前の居酒屋で飲み足りなかったので、部屋の中で一人缶ビールを飲み続けていた。

すると彼は、わたしが「その気」かどうか再度確かめるべきと考えたらしく、「自分から襲いかかった方がいいの」かと聞いてきた。

そんな質問されたのは初めてで、だからこそ時間が経った今もよく覚えているのだけど、反対に自分がどう答えたかは記憶が曖昧だ。確か、自分で服は脱げるので大丈夫です、ビールをもう少し飲みたいんですというような意味の返答をした、ような気がする。


◼︎合意の作り方を教えてもらったようなそんな瞬間
今となっては、そんなまっとうな質問に、違和感を抱く自分の方が健全でなかったのだと思える。後日、本人に、どうしてそんな質問をしたのと尋ねたら、部屋に入ってやはりそういう気分でなくなったのなら、それを言い出しやすいようにするのがマナー、と考えたから、と教えてくれた。

襲いかかった方がいいのか、という質問でその意図が達成されるのかはよくわからないけど、密室に入っても無条件に距離を詰めてこないのは確かに、礼儀正しいやりかただ。

今となっては、わたしにとっては快適なやり方はこれであると声を大にして言えるけれど、当時は実体験が伴わず、性的関係を作る際には言葉でいろいろ主張してはいけないのかなと考えていた。すべての性的な関係はもっと、明確に言葉にして構築して行ってもいいんだと確信できた第一歩は、たぶんあのホテルで踏み出していたんだな。